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ある学会員の半生

1 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/04 23:48 ID:???
小説です。

タイトル通り、ある一人の学会員の半生を、
誕生から追っていきたいと思います。
固有名詞だけは仮名にしますが、ほかはノンフィクションです。

初めのうちはダラダラしててツマラナイと思いますが、
しばらくしたら面白くなると思うので、
優しく見守ってやってください。

2 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/05 00:00 ID:???
ある病院の分娩室で、女が出産の瞬間を待ち構えていた。
女の名前は夏子。夏子にとってこの出産は、実に4度目。
既に出産にも慣れていて良い経験数ではあったが、
夏子の場合、体質上の問題もあり、それまでの3回において
全て帝王切開による出産であった。
そして、やはり今回も例を外れる事は無かった。
しかし、夏子は、今度生まれてくる子供には特別な期待があった。
実は、3人の子供は3人ともが男であった。
前々から女の子が欲しかった夏子にとっては、
体力的なこともあって今回がラストチャンスと言えた。
だからこそ、出産予定日をずらし、この雛祭り当日に子供を生むことにしたのだ。
何の根拠も無かったが、女の子の日に産めばきっと女の子が産まれると思ったのだ。

3 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/05 00:07 ID:???
丁度その頃。
夏子の住む家の近くで、大勢の人間が集まっていた。

南無妙法蓮華経
南無妙法蓮華経

経が聴こえる。人々は学会員であった。
人々は、4度目の帝王切開を行なう夏子の無事を祈っていた。
それだけでない、実は夏子は第一子を出産してまもなく亡くしていた。
そのため、戸籍上は第二子が長男となっていた。
第二子以降は、何の問題も無く成長を続けてはいたものの、
本人とその周りの人々は心配でならなかった。
だから、人々も、夏子も心の中で経をあげ続けた。
やはり、夏子も学会員であった。

4 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/05 00:16 ID:???
そして、赤ん坊の泣き声が聴こえた。
出産は無事に成功したのだ。
看護婦が夏子に告げる。
「夏子さん! よく頑張ったわね! 元気な男の子よ!」
「え!? また!?」
夏子は思わず声に出してしまった。

夏子、男子出生の報が、祈りを上げ続ける人々に伝わった時も、
彼らは口を揃えて言った。
「え!? また男!?」
それだけ女子に対する期待が大きかったのか、
ゆえに男子に対する落胆が大きかったのか…
ある意味で、産まれて来た子は、望むべくして生まれて来たのではないのかもしれない。
広和と名付けられるその子――
「広宣流布」と「平和」から一語ずつとって名付けられるその子こそ、
この物語の主人公である。

5 :名無しさん@お腹いっぱい。:02/07/05 00:44 ID:???
>>1
楽しそう。がんバレー。

6 :名無しさん@お腹いっぱい。:02/07/05 01:48 ID:???
>>1

それ、お前か?べたすぎ

7 :名誉 ◆oi8ARVqQ :02/07/05 01:51 ID:OAfMrf5C
新興宗教がよくやる営業トークじゃ(藁
飽きた(藁
もっとエロチックなヤツを頼む。
ナニしておるときの恍惚感を仏教的に表現するとか・・・
一工夫が必要じゃな(藁藁

8 :名無しさん@お腹いっぱい。:02/07/05 04:36 ID:???
まだ話し始まってないじゃん。しばし静観を。

9 :1@休憩中:02/07/05 23:27 ID:???
>>6はい、この小説は私自身の事です。
>>7すみません、エロに走る気はないです。
それと、予め言っておきますが、これはいわゆる体験発表などとは全く違います。
一応、それなりの伏線は張ってあるつもりですが、なにぶん文才に乏しいため、
ご了承ください。
>>8ありがたいお言葉ですが、想像以上にちんたらやって行く予定です。
宜しかったら、スレがしばらく進んでからご覧ください。
>>5楽しくやらせていただきます。では、今日も少し進めたいと思います。

10 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/05 23:28 ID:???
父親、母親、共に健在。
子供は、元気な男の子が3人。
ただそれだけの、至って普通の、数ある家庭の一つ――海野家。
それが広和の生まれた家庭である。
広和も、ごくごく普通に育っていった。
少々変わった点といえば、
母親の夏子が女の子を諦め切れなかったが為に、
少々男らしくなく、むしろ外見的には少女のように育てられた事くらいだ。
もっとも、それは次男の時にも言えた事で、
可愛らしい服装をさせられた次男は、シャイな性格になった。
広和の場合は、末っ子と言う事も関係しての事であろう、
甘やかされ、好きなように育った結果、天真爛漫、元気いっぱいな子になった。
夏子に連れられ、学会の会合に参加した時も、
会の最中こそは大人しく過ごしていたが、終わるや否や持ち前の元気を全開し、
会に参加した人々の前に立ち、歌を歌い出すなどのこともしょっちゅうであった。
そんな事を繰り返すうち、広和の名前はあっという間に広がり、
学会の幹部の耳にまで届いていた。

11 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/05 23:30 ID:???
しかし、広和3歳の春。
3度目の誕生日をひと月前に迎えたばかりだと言うのに、事件は起きた。
広和が病に倒れたのだ。
病名は、ネフローゼ。腎臓病の一種である。
無論、不治の病とかいった類のものではないが、寝てれば治るものでもない。
即刻、近くの市民病院に入院する事となった。
広和本人は勿論、兄弟も、母親も心配で心配でならなかった。
海野家にとって、出産以外で入院する者など初めてのことだったのだ。
広和は入院して、しばらくは水を飲むことが出来なかった。
治療の一環として、必要最低限以上の水分を摂ることは厳しく禁じられた。
そのため広和は、ボクサーの減量さながら、辛い食生活を強いられた。
「そこにお水があるじゃない! チョウダイよ!」
「あれは消毒用のお水だから、飲んだら毒なのよ」
「それでもいいからチョウダイ!」
病院という施設である以上、水を得られる場所は至る所にあった。
その分、水を断ち切るという事は必要以上に大変な事だったであろう。
日に日に広和の顔は痩せこけ、あの元気な姿はどこにも見られなくなった。
焦燥しきった子の寝顔を見て、夏子は思った。
「私はもう数十年も生きてきたけれど、この子はまだ3年しか生きていない。
 お願いです御本尊様、私の命と引き換えにでもこの子を助けてください…!」
夏子は、眠る広和の横で経をあげ続けた。

12 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/05 23:31 ID:???
言うまでも無く、唱題は海野家のみならず、
近所の学会員達で幾度となく会合が開かれ、広和の回復が祈られた。
時には学会幹部が見舞いに来ることもあった。
その甲斐あってか、広和は異例のスピードで回復を遂げた。
1ヶ月もすれば、元気いっぱい、元通りの姿を取り戻した。
一つ、以前と違う点といえば、すっかり肥満体になった事だ。
そういう副作用がある薬を投与していた事を考慮しても、
病人とは思えないほどの食欲を見せ、見る間に太っていった。
「あれだけ疲れきってたのが、嘘みたいね」
夏子も隣で笑っていた。
そして、入院から3ヵ月後。
広和は、膨れ上がった体と共に、無事退院した。

13 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/07 01:29 ID:???
広和は幼稚園に上がった。
その地域では名門と名高い幼稚園で、兄達も同じ所に通っていた。
しかしそんな事は広和には興味も無いし、知る由も無い。
が、名門とは言え問題が無いわけではなかった。
夏子は、幼稚園の名前にこだわるばかりに、場所に関しては気を使わなかったのだろう。
車で30分かかる距離は、園児には辛い。
当然、送迎は幼稚園バスを利用していたが、バスは幼稚園と海野家だけを行き来する訳ではない。
他の子供達を送迎する時間を考えると、1時間ほどの道のりであった。
それは、広和が夢にまで見てしまうほどだ。
毎日1時間かけて幼稚園に通う子は他には無く、海野家の近隣では広和一人であった。
けれど、甘えて育った広和は元気だけは有り余っていた。
幼稚園のクラスの中でも、リーダー的存在とまではいかずとも、
周囲を明るくさせるムードメーカーとして人気だった。

2年後、卒園。
そして、小学校に入学。
小学校は、近所の、ごく普通の公立校だ。
だが、名門幼稚園に通ったことはここにも影響した。
小学校には近隣の子達しか来ない為、同じ幼稚園に通っていた子がいなかったのだ。
他の子達は幼稚園からの知り合い同士ばかりであったのに、
広和は孤独であった。
仲良く大勢が遊んでいる中に、一人で入っていく勇気は無く、
持ち前の元気も発揮できず、しばらくは友達もつくれなかった。
「ただいま―…」
「あ、お帰り広和。丁度お客さんが来てるのよ」
「え?」
「お帰り、広和君。はじめまして、吉田といいます」
「はじめまして…」
吉田は、学会の人間だった。

14 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/07 01:30 ID:???
広和は、小学校にあがると同時に、学会においては少年部になっていた。
その、少年部員会が行なわれるので、吉田はその旨を知らせに来たのだ。
「じゃあ、日曜日にまた会おうね」
広和は良く分からなかったが、特に用事があるわけでもない。
そのブインカイとやらに行くことになった。
部員会の会場は、海野家の近くの民家だった。
ただ、広和には民家だという意識はあってもそこに人が住んでいると言う意識は無かった。
会場には、広和と同じくらいの歳の子や、何歳か年上の子、大きく歳の離れた青年が
和気藹々とした雰囲気で笑いあっていた。
「やぁ、広和君、ようこそ!」
アットホームなムードに、すぐに広和も惹かれた。
会合は、まず唱題で始まった。広和も、家で家族と経をあげてはいたが、
他人とするのは初めてだった。

なんみょーほーれんげきょー…

相変わらず何の意味だかも分からない、正しく呪文をあげ終わると、
ゴショや、イケダセンセイに関するお勉強があった。
やっぱり何の事だか分からなかったけれど、
その後に始まったレクリエーションで広和の心はもうトリコになった。
特別変わった事ではなかったが、大人数で遊ぶ事に広和は飢えていた。
それが出来る場を見つけたのだ。
広和はすっかりショウネンブインカイが好きになった。

15 :名無しさん@お腹いっぱい。:02/07/09 06:46 ID:???
それからどーした。

16 :1@休憩中:02/07/09 22:08 ID:???
稚拙な文章を読んでいただきありがとうございます。
なんかPCの不調でネットに繋げられませんでした。
復活したので、続けます。

17 :1@休憩中:02/07/09 22:09 ID:???
ある時、広和のちょっとした事件がおきた。
手の、指という指にイボが出来たのだ。
あまりにも醜悪であったため、学校でいじめられるのではないかと
心配した夏子は、病院にも連れて行ったが、
周囲の人間は勿論、広和本人にも原因が全く思いあたらず、
適当な治療が施せなかった。
「まぁ、別段身体に不自由が出るわけでもないでしょうし…
 しばらくすれば治りますよ」
医者はそう言った。
しかし夏子は、どうにも落ち着かなかった。
そして、広和とともに御本尊に真剣に祈る事を決意した。
「いい、広和。御本尊様って言うのは本当に素晴らしいのよ。
 真剣にお願いすれば、何だって叶えてくれるの。
 アナタの病気も、皆で御本尊様にお祈りしたから治ったのよ。
 だからまた、あなたのイボが治るようにお祈りしましょう」
無垢な広和は、言われた通り、何も疑わずに祈った。
真剣に、本当に真剣に経を上げ続けた。
そして数日…
気付いた時には、イボは綺麗に取れていた。
そんなものがあったなど想像できないほど、跡形も無く。
「良かったわね、広和…御本尊様は凄いでしょう?」
広和には、ごほんぞんさまの凄さは分からなかったが、
とにかく醜いイボが取れたことには感謝した。

18 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/09 22:10 ID:???
小学校4年にあがった春――
いつもの様に、学会男子部の吉田が広和のもとに訪れた。
「こんにちは、広和君。今日はちょっとお知らせがあるんだ」
学会には、その内部にも様々な組織が存在する。
会合を進行するもの、会場を管理するもの、
勉学を究めるもの、弘教を強く勧めていくもの……など。
その中には楽団も存在する。
吉田が知らせに来たのは、楽団への誘いだった。
「少年部の中の合唱団でね…小学校4年生から6年生。
 毎週日曜に集まって皆で歌を歌ったりしてるんだ。」
「歌?」
「そう。勿論みんな初めてだから、一生懸命練習して、会合で発表したりもするよ。
 他にも、少しだけ勉強とかもするけど…。」
広和は、学校での成績は良かった。むしろ勉強は好きと言えた。
しかし、いつからか、あの天真爛漫な性格は身を潜め、
人見知りになっていた広和にとって、またも
新しい集団の中に飛び込む事は躊躇された。
もっともそう考えるのは、多少大人になったと解釈できなくも無かったが…。
「どうかな、広和君。やってみないかい?」
「う…ン…」
「どうするの、広和。これ、今入らなかったら今度は
 5年生に上がるまで入れないのよ?」
夏子にそう促された広和は、何故か入らなければならないという気になった。
「…じゃ、分かりました」
「そうかい! じゃあ今度、簡単な面接があるからね………」
そのとき広和は、まさか自分がその合唱団で活躍しようとは思ってもいなかった。

19 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/09 22:11 ID:???
面接と言っても、試験のようなものではない。
既に入団は決定していて、顔合わせのようなものだ。
入団してみれば、知ってる顔もいくつかあったが、
総勢30人の中の一割ほどだった。
広和は不安だったが、付き合っていくうちに自然打ち解けていった。
そのうち、小さなものではあるが歌の才能も開き始め、
5年生が終わる頃には、団の幹部に選ばれた。
「幹部? 幹部って何するんですか、吉田さん?」
「君の先輩がやっていたじゃないか。練習に集まった時、
 その進行をやったりするやつだよ。
 幹部と言っても、正確には広和君には副幹事をやってもらおうと思ってる。
 副幹事は君以外にも二人いて、幹事を中心に頑張っていくんだ」
広和は、合唱団は歌を歌うだけで満足していたので、
正直言って幹事なんてやりたくはなかった。
しかし、やりたくないという気持ちだけで、
期待してくれている吉田の気持ちを裏切るのは心苦しく感じられた。
「じゃあ、分かりました。…やります」
「そうか、ありがとう。そしたら、今度の入卒団式で………」
任命式があって、広和は正式に合唱団の副幹事となった。

幹部の仕事は、広和が思っていたよりは多かった。
団員が練習に集まった時、まず練習前の打ち合わせがある。
その時の司会進行、その後の唱題の導師。
大勢の前で、一人御本尊の前に座り、唱題をするのは苦手だった。
練習が始まると、皆をまとめなければならない。
そして、終わりの打ち合わせで、やはり司会進行と導師。
この程度は広和にも予想できた事だ。
しかし、幹部には、月に一度、幹部会というものがあった。

20 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/09 22:12 ID:???
この合唱団は、広和の住む市のほか、近隣の市のメンバーから出来ていた。
そして、他の市にも同じような合唱団があったのだ。
五つくらいの合唱団から、幹部達が集う。それが幹部会だ。
内容は、大人を中心に、ゴショの勉強をしたり、自分達の合唱団を交代で紹介しあったり、
それぞれで「研究」してきた事を発表しあったり…。
それで互いの団の友好を深めようというわけでもない、
要は、合唱団の幹部会という名目ではあるが、また別の組織だ。
幹部会で、広和は初めて「人間革命」というものを知った。
分かりやすく言えば、学会の歴史が描かれた小説で、
幹部会では、毎回、一冊ずつ読んできて、感想を発表しなければならなかった。
子供用に改訂されたものではあったが、とても面白いとは思えず、
いつも少しだけ読んで適当な感想を作っていた。
もっとも、そういう子は広和だけではなかったようだが。

幹部になってはじめて訪れた場所があった。
東京にある、学会本部。
合唱団の発表会があるので、学会の名誉会長にそれの招待状を贈るためだ。
せっかく東京まで出てきたので、他にも見て回った。
途中、ある公園にも赴いた。
勿論学会関係のものだが、そこで署名をすると永久に保存してくれるという所だ。
それが本当ならば今も、海野広和の名が保存されているはずだ。
その公園でしばらく腰を落ち着かせていると、不意に公園がライトアップされた。
まだ時間的には早かったが、管理人が粋な計らいをしてくれたのだ。
「わぁ…キレイ」
「すげー…」
「素敵…」
「へぇ…こうなるんだ」
一緒に来た幹事や、他の副幹事の女の子たちが感動を口にする中で
広和は一人そう言った。
「お前、冷静だな〜」
「『こうなるんだ』って…もう少し無いの〜?」
皆は笑いながら揶揄したが、広和は一人で納得していた。
ああ、俺って冷静なんだ…そうだ、落ち着いているなんて良く言われるしな。
ひょっとしたら俺は、他の人より感情が欠けているのかも知れない。
そう、思った。

21 :退転者(w:02/07/10 16:22 ID:???
すばらしい。
これぐらい若いころはまだ良かったんだよなぁ…。


22 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/11 00:47 ID:???
合唱団で頑張る一方、学校でこんな宿題が出た。
「皆にはどうして自分の名前がつけられたのか、
 お母さんたちに訊いて調べてきて下さい」
名前の由来…小学校ではよくある事だろう。
家に帰った広和は、さっそく夏子に訊いた。
「ねぇお母さん、僕の名前は何で『広和』に決まったの?」
「え…? そうね、それは『広』く、平『和』な心を持つ子に
 育ってくれるようにって言う願いを込めたからよ」
『和』が『平和』から来ているのは正しかったが、
『広』は、本当は『広宣流布』から来ているはずだった。
しかしまだ子供の広和にそんな事を理解できるとも思えなかったし、
学校の宿題で広宣流布などという単語を出す必要も無いと思ったのだ。
「ふ〜ん…。じゃあ、誰が付けてくれたの?」
「お祖父ちゃんよ」
祖父――広和は、父方の祖父には一度も会ったことが無かった。
その理由は、ただ遠くに住んでいるから、だけでは無いような気もしていたが、広和に分かる由も無かった。
だから、海野家でお祖父ちゃんお祖母ちゃんといえば、母方の祖父母を指した。
広和は祖父の事が嫌いではなかった。いや、好きと言っても良かったかもしれないが、
自分の名前が両親に付けられたものではないという事実は衝撃的であった。

23 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/11 00:49 ID:???
「そうなんだ…。じゃあさ、お兄ちゃんたちの名前は?
 やっぱりお祖父ちゃんが付けたの?」
「いいえ」
「じゃあ、お母さんたち?」
「二番目の啓祐はそうだけどね…上のお兄ちゃん、康博は、
 池田先生に名付けていただいたのよ」
イケダセンセイ――それはまだ広和には慣れない名前だった。
少年部員会や合唱団で幾度も聞く名ではあったが、
具体的にどんな人物かさっぱり分からなかったし、
少なくとも自分の家族ではないはずだ。
そんな赤の他人に、自分の子の名前をつけさせる両親のことは理解できなかったが、
夏子が、イケダセンセイに並々ならぬ信頼のようなものをもっていることは
子供ながらに分かっていた。
だから、『康博は両親の最も信頼できる人間に、啓祐は両親自身に
名付けられている。広和はただの親戚に名付けられている』という風に
解釈した広和は、自分は兄弟の中で一番愛されていないのかもしれないと考えた。
だから、学校で
「広く平和な心か…良い名前だね」
と友人や教師に誉められても、全く嬉しくなかった。

その町で、海野の三兄弟といえば知らないものは居なかった。
みんな仲が良くて、明るくて、可愛くて、良い子ばかりだ、という評判である。

24 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/11 00:50 ID:???
三兄弟の年齢は、3歳毎離れていた。
つまり、広和が小学校6年生になった時は、
次兄の啓祐は中学3年生。受験生だ。
広和は、長兄の康博とは6歳も離れている。
そのため一緒に遊ぶような事も少なかったし、
それに活動時間帯が異なっていたので顔をあわせるのも少なくなっていた。
だからこの日の朝も、広和は啓祐と一緒に仏間にいた。
朝の勤行の時間である。
しかし啓祐は唱題を全くしなかった。
仏間に入ると、戸をきっちりと閉め、中で漫画を読み出す。
そして10分ほどで、さも唱題を終わらせたような顔つきをして出て来る。
そんな啓祐に、広和はじっとついていくしかなかった。
唱題はしなくてはならないような気がしていたが、
啓祐に怒られるような気もしたので、声には出さず、心の中で唱題をあげた事もあった。
広和は、評判ほど良い兄弟ではないよな…そう思った事もあった。

広和が啓祐の言いなりになっている事は他にもあった。
受験を控える啓祐は、中学3年になってから塾に通わされていた。
だが、よほど気に食わないものがあるのか、ここしばらくは全く塾に行っていなかった。
そのことが夏子にばれるのは勿論面白くないので、
塾のある日は、出かけたフリをして自分の部屋に戻っていた。
ところがそうすると、塾から電話がかかってくるので、夏子に出られるとすぐに分かってしまう。
だからその日だけは、電話の前に広和が張り付き、誰よりも早く受話器を取り、
塾からの電話が夏子にばれないようにしていた。
朝の勤行の時間も、この塾の時間も、子供だましの小細工である。
夏子にはもとよりお見通しだったかもしれないが、
しかし広和には、啓祐の言いなりになっているという意識だけが強まり、
不満だけが募っていった。

25 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/14 00:38 ID:???
ともあれ、その年の冬を越えれば、広和も小学校を卒業する時期になってきた。
思い出深い合唱団の卒団式では、今までの練習の成果を存分に発揮した。
学会の少年部の有志により作曲された曲の数々や、
少年部歌、合唱団歌、それ以上に
アンパンマンのテーマソングを歌ったのは忘れ難い。

少年部員会でも卒業を祝う会が行なわれた。
いつも通りの会合に加え、普段より多目のレクリエーションや、
ちょっとした食事などが出て、最後に6年生から、
後輩への贈る言葉、これからの抱負を言う時が来た。
残念ながら、この会に参加していた6年生は広和を含め
僅か2人だったので、少々寂しくはあったが、
まず広和が言う事になった。
特別感動するような凄い事を言うでもなく、無難に終えた後、
もう一人の言葉を聴いて、広和は少し後悔した。
「………皆さんありがとうございました。………
 これからも毎日の御題目を欠かさず、
 池田先生と共に頑張っていきたいと思います。………」
これを聞いて、自分は学会に関係ある事を何一つ言っていないことに気付いた。
そうだ、毎朝勤行をちゃんとやるとか、一言でいいから気を利かせるべきだったな…
そう思ったが、この頃広和は勤行などほとんどやっていなかったので
言ったところで嘘になるだけではあった。

勿論、小学校の卒業式も行なわれた。
広和は学校では、品行方正、真面目で優秀な児童でとおっていた。
とくに働く事が好きで、掃除や委員会の仕事を積極的に行なった。
それが評価されて、委員会活動の代表として表彰されたりもした。
また、実はPTAに少し参加していた夏子も、
卒業生の親として言葉を贈った。
広和の名前は出さなかったが、
自分の子供が幼少時に病気にかかって入院した事を頭に、今日卒業の日まで
親子共々頑張ってきた事を涙ながらに語り、周囲に感動を呼んだ。

そして、小学校を卒業した。


26 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/15 23:47 ID:???
中学校に上がると、広和の学会に関する活動は一変した。
まず合唱団にいかなくなったので、週一度の会合がなくなり、
数少ない勤行をする機会がなくなった。
また、少年部から中等部に上がったわけだが、
中等部は少年部に比べ、活動が消極的であった。
部員である中学生は、大体が小学校時代に比べ忙しいからだ。
部活に打ち込む者もいるし、塾に通うものも増える。
更には、反抗期を迎え、特別意味もなく学会を離れていたものもいる。
広和も塾に通うようにはなったが、そこまで忙しくなるものでもなかったので
毎回の中等部員会には一応参加していた。
学会活動と言えば、それだけだ。

あるとき、中学での歴史の授業中。
「みんなの中で、宗教に入っているご家庭はあるかな?」
授業の流れで普通に出てきた、教師からの質問だった。
「おい海野、お前ンち仏教なんだろ? 手ぇ挙げろよ」
隣で広和の友人が、冗談半分で催促した。
広和は、友人を家に連れてきても、家にある仏壇を隠したりはしていなかった。
自分を含め、家族が宗教に入っているということに
何の不思議も持っていなかったのだから、当然と言えば当然ではあるが。
だから、広和の知り合いの何人かは「広和は仏教をやっている」と知っていた。
催促されて、少し照れながら手を挙げた広和に、教師が反応した。
「あ、海野君ちは何か宗教やってるんだ?」
「先生、こいつンち仏教ですよ」
「仏教? ああ、じゃあ創価学会かな? 今日本で一番大きい宗教団体だからね」
広和は、この時初めてソウカガッカイと言う単語を聞いた。
だから、その教師の質問には答えられなかった。
それより広和に気になった事は、自分以外の生徒が、誰一人手を上げなかったことだ。
それまでは、漠然と皆も何かしらの宗教をやっているんだろうと思っていたのに、
誰もいなかったのだ。
そのことはショックだったし、一人で手を挙げた事は何か恥ずかしかったし、
けれど、どこか誇らしいような、複雑な気分だった。

27 :1 ◆cAvVyGa. :02/07/15 23:47 ID:???
「あ、広和。今度、大きな会合があるんだけど、
 あんた塾のない日だし行けるわよね」
夏子が広和にそう伝えた。
言われた日は、確かに何の予定も入っていなかった。
だから、その会合には、行きたいとも生きたくないとも思わずに
行く事が決定した。
会場は、車で数十分かかるところにある、学会の文化会館。
合唱団時代によく使用したところだ。
確かに合唱団時代にはよく使用したが、「会合」で
広和がここに来るのは珍しい。
「会合」と言えば、近所のおばさんちでやる「座談会」か、
中等部員会しか無かった。
その大きな会合は、「大きな会合」としか認識しなかったから、
具体的に何のための会合かは考えもしなかった。
実際その会合は、普段の会合と比べ、会場がやたらに広い事、
参加人数がやたらに多い事くらいしか、違いが分からなかった。
ところがその会合で、一つ発見があった。
どこかで見た事がある顔。
中学校の、クラスの違う知り合いだ。
「あれ…? 桜井?」
「あ? おお、海野じゃん」
「あれ…? お前…あれぇ?」
思わぬ所で思わぬ顔に出会い、お互い言う事が無かった。
落ち着いてから話し合ってみれば、
やはり桜井も学会員だったと言うことが分かった。
「そうだったんだ…でもお前、中等部員会出てないじゃん」
「部活で忙しいからさ。俺、バスケ頑張ってんだぜ」
「へぇ」
「海野は? お前部活何やってんの?」
「え? 俺?」
広和は科学部に入っていた。
理科が好きだったからこそ入った部ではあるが、
ろくな活動もしていなかったので、オタク的な印象が強く、
広和は自ら進んで言うことは苦手だった。
「いや…科学部…」
「科学部か。なんか、それっぽいよな、お前」
それっぽい。
広和は、小学校の時から地味を貫き通してきたような感じで、
それに加え、未だに肥満体型は治っていなかった。
自分でもこの姿はオタクそのものだなと自覚もしていたので、
科学部に入っていることは出来たら秘密にしたかったというのもある。
「ま、いいや。じゃあ、またな」
「ああ、またな」
ともあれ、同じ学校に同じ学会員がいた事を知った広和は、
嬉しくてたまらなかった。

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